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​解説:現状報告

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再掲:堕武者グラインド M3-2020秋 限定配布フリーペーパーより

M3-2020秋にお越しの皆さま、こんにちは。

同人音楽サークル「堕武者グラインド」のAgaiと申します。この度は弊サークルのスペースに足をお運びいただき、誠にありがとうございます。

 

さて、このペーパーでは何を書きたいかというと……皆さま、堕武者の書下ろしアルバムとしては4年ぶりの新譜「現状報告」はお手に取っていただけましたでしょうか?

本作、楽曲もさることながら、歌詞に力点を少なからず置いたアルバムなのですが、膨大な量のテキストをボーカルのKIMに歌いこませたにも拘らず、内容や論理構成が抽象的・飛躍的で分かりづらい箇所もあったかと思います。

そこで、このペーパーでは歌詞の意味合いを補完しつつ、楽曲の狙いや思い入れなどを語らせていただくことにしました。

 わざわざ紙一枚使わなくても、WEBで公開すればいいのではないか? というご指摘もあるかと思いますが、個人的に、イベント帰りにフリーペーパーを読みながら電車に乗って帰る時間が結構好きだったりするんですよね。

 というわけで、いってみましょう。

 

(なお、歌詞全文は堕武者HPをご参照ください)

 

Tr.01  〆ロンブックスのテーマ(委託に初勝利編)

堕武者の持ちネタ、「メロブの委託が連敗」シリーズ最新作。堕武者が東方アレンジに力を入れていた2010年前後……あきばお~こく様・とらのあな様・メッセサンオー様・ホワイトキャンバス様・D-STAGE様など、様々な同人ショップにお世話になってきましたが、唯一委託が受諾されなかったショップがメロンブックス様でした。

東方アレンジやオリジナル作品で8連敗が経過し…いつしかメロブへの委託申請を行わないようになりました。

そして迎えたM3-2019秋、企業スペースをフラフラしていたAgaiの目に飛び込んできたのが「メロンブックス サークル出張窓口」の看板でした。

恐る恐る近づいてみると、委託申請の窓口が設けられている模様。意を決してスタッフ氏に近づき、自分がサークル代表であること、メロンブックス様で新譜の委託販売を行いたいこと、納品用の在庫が本日あることを伝えると、実にあっさりと「では、こちらの用紙に記入を」と促されました。

思わず「あの、審査とかは無いんですか?」と、藪蛇かと思いつつも尋ねると、不思議そうな顔で「いえ、特に…」とのご回答。

ここにきて初めて、メロブは委託に関する方針を変えたのだ、と気づきました。しかし同時に、私はまだ勘違いをしていました。委託販売の受諾イコール、店頭の棚に並ぶとは限らないということに……

あとは歌詞に書いたとおりです(同人の魂がかように浅薄なものではないことは明らかではありますが)。

なお、メロブ秋葉原店にお邪魔したその足でとらのあな様にも足を運んでみたのですが、同人音楽コーナーがかなり縮小されていて、こちらでも少なからずショックを受けました。

かつては秋葉原B店のワンフロア全体が同人CDコーナーだったのですが。

CDの衰退とダウンロード・ストリーミングの台頭、コロナ禍における店頭集客の減少と通販需要の増加、同人音楽自体の市場全体に占める割合の変化など、理由はいろいろあるかと思いますが……

生き残るためには、堕武者も流通のトレンドに乗らないといけないのかもしれません。

Tr.02 陰間者の小唄

「陰間」とは、Wikipediaによると「江戸時代に茶屋などで客を相手に男色を売った男娼の総称。特に数え13 - 14から20歳ごろの美少年による売色をこう呼んだ。」とのことです。

かつて堕武者でアルバム1枚に1曲はあった男色ネタ。

しばらく封印というか、音源製作よりライブ上演がメイン活動となってからは離れていたのですが、久しぶりの採用となりました。楽曲に和音階を採用しているので、それに合わせて日本の同性愛を話題としてチョイス。

本来、陰間「者」という言い方はしないのですが、私の好きな諺「引かれ者の小唄」に掛けてみました。

この曲やTr.03で使われている「デス声とノーマル声を、パンを左右にちょっと振って重ねる」という技法は、私が敬愛するグラインドコアバンド・PIG DESTROYERから拝借しました。

Tr.03 血糖スパイク☆ダイナマイト

愛だの恋だの異世界だのをテーマにできない堕武者では、作者の身近に起こった出来事は貴重なネタの源です。

ここ数年急速に太り続けてもギリギリ踏みとどまっていた健康に関する諸数値ですが、今年3月に職場で受けた健康診断にて、ついに血糖値やヘモグロビンA1c、血圧、肝機能や腎機能、それに尿酸値など、あらゆる数値が「ただちに治療を要する」自体となりました。

遅まきながら、今年の8月からは肥満外来にて医師の指導の下、食事療法を続けております。治療に並行して、本を読んだりネットを巡回したりして得た知識を活かすため、歌詞の話題を糖尿病に定めました。

そして、ネットで知った「ドカ喰い気絶部」という概念……炭水化物を短時間に大量摂取して血糖値を一気に上げ、その後急速に血糖値が低下すること(これを血糖スパイクと呼びます)で気絶することを気持ちよく感じるという狂った生活習慣愛好者が(ネタかもしれませんが)存在することを知り、ますますグラインドコア向きのテーマだと思いましたね。

ここで「血糖スパイク☆ダイナマーイト」という歌詞が生まれ、それからAメロのリフが誕生しました。

 

Tr.04それを無邪気に言えない

今回もっともセンシティブな話題であり、ネタとすることに躊躇いもありましたが、それでも歌にしたいという動機が強かったテーマです。

グラインドコアの本家といっても過言ではないアメリカのバンド「Anal Cunt」(バンド名からして酷い)の歌詞には、とにかく「〇〇はゲイ」「××はゲイ」という表現が繰り返し出てきます。あまつさえ「Y O U R E G A Y(読み方はワイ・オー・ユー・アール・イジエワイ)」という歌詞もあるほど。Wikipediaでは「これは同性愛者のことを指しているのではなくマサチューセッツの風習で「馬鹿・間抜け」という意味である。」と書かれていますが、だからといって今日の、LGBTQIAの権利に関する理解・支持が進んだ現代社会において、無邪気に使用できる表現ではありません。

他方で、例えばフジテレビのお笑い番組でゲイを笑いものにするネタが20数年ぶりに復活し、社会から厳しい糾弾を受けるなど、人々の感覚は今なおアップデートを続けている途中といえます。同性愛者が集まると区が滅びる、と主張した議員がいたようですが、感覚の更新がどうしてもできない人もいるのでしょう。

そのあたりの軋轢を表現したかった曲です。当然ながら、性的マイノリティの方を誹謗中傷する意図はありません。

 

Tr.05 不如意棒のブルース

 作者に嫁がいないことを除けば全篇ノンフィクションの歌詞です。歌詞に出てくる薬物の現物をCDジャケットの写真に使うため、病院を訪ねました(簡単な問診だけで処方されるので少し驚きました)。

 性に関する下劣な表現もまた、ピュアなグラインドコアを志す堕武者にとって重要な歌詞のピースとなります。 

しかし、30代も後半を迎えてからは、性欲が減退し、エロメディアと向き合う機会も減り、本当に二次元グラインドコアを標榜していいのか?と思う事態になっていました。今回、逆説的に不能を歌詞とすることで、何とかグラインドコアの露悪趣味を保った格好です。

 

最後に謝辞を。音源完成のために多大な力を貸してくれたKIM・Tifara、完成品のチェックをしてくれたBoss(第一子誕生おめでとうございます)堕武者の珍妙なリフをソリッドに、かつパワフルに弾いてくれたねこりすのねこさん様、あぷらじで音源をご紹介いただいたすし~様、堕武者の告知にご協力をいただいた皆様、そして堕武者スペースにお越しいただいた皆様、ありがとうございました。         

堕武者グラインド代表 Agai

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